左室壁運動障害に伴い、一過性左室流出路狭窄が出現した高齢の2女性

伊賀幹二、泉知里、中野敦、坂上祐司、北口勝司、日村好宏、玄博允、小西孝 

要旨:心室中隔中部から心尖部におよぶ大きな無収縮領域が出現したため、一過性の左室流出路狭窄を呈した高齢の2症例を経験した.連続波ドプラーで測定した左室流出路の最高血流速は、各々4m/sec、3.5m/secで、収縮期僧帽弁前方運動がみられた.左室壁運動が正常化した1週間後では、収縮期雑音および収縮期僧帽弁前方運動は消失し、左室流出路の最高血流速も各々0.7m/sec,1.2m/secとほぼ正常化した.拡張末期における大動脈と中隔基部のなす角は、症例1では急性期78度、1週間後84度、症例2では急性期110度、1週間後135度であり、ともに急性期の方が鋭角であった.左室流出路狭窄が生じた原因は、前壁中隔から心尖部の大きな無収縮領域の出現 により中隔基部が大動脈に対し、よりS状となり、加えて中隔基部の壁運動が障害されずむしろ亢進したためと考えられた.